【対象と方法】前報でも報告したように，日本看護系大学協議会会員名簿(平成15度)に記載されている3,745名を調査対象とした。平成15年12月８日～20日に，対象者の基本属性と質的研究の方法についての知識や実践経験などに関する91項目からなる質問紙による郵送調査を実施した。平成16年１月８日～23日には礼状兼催促状を発送した。平成16年２月末日までの回収数は1,118例であった。所属機関からの通知などにより退職や死亡が判明した対象不適格例が12例あり，最終的な回収率は29.9％であった。このうち，看護研究の実践経験があり，質的研究に関する知識を持つと回答した695名（女648名，男44名，不明3名）のデータを分析対象とした。

【結果と考察】(1)質的研究の信頼性の認識と大学・大学院での質的研究の講義の受講歴とは関連が認められず，自己学習の経験（信頼性は高い－「はい」で97.4％，「いいえ」79.1％，以下同様），勉強会等の実施経験（75.8％対62.8％）と有意であった。妥当性に関しては，自己学習（98.0％対77.8％），勉強会等の実施経験（74.7％対55.6％），講習会等への参加（63.0％対36.1％）で有意であった。(2)各種標本抽出方法の実践経験では，信頼性に関しては同質sampling（47.0％対23.8％），異質sampling（20.8％対4.8％），全数選択（19.5％対4.8％），指名式sampling（29.1％対9.5％），理論的sampling（24.0％対7.1％）で有意であった。妥当性に関しては，異質sampling（22.3％対5.7％），全数選択（17.4％対2.9％）で有意であった。(3)各種のデータ収集方法の実践経験では，信頼性に関しては，半構造化面接（87.6％対67.4％），narrative法（21.7％対14.0％）で有意であった。妥当性に関しては，半構造化面接（86.4％対63.9％），narrative法（21.1％対13.9％），focus group法でも有意であった。(4)各種のデータ解釈法の実践経験と信頼性に関しては，テーマ的コード化（55.3％対33.3％），質的内容分析（75.8％対58.1％），narrative分析（15.8％対11.6％），現象学的アプローチ（25.5％対11.6％）で有意であった。妥当性に関しては，質的内容分析（76.0％対55.6％），narrative分析（16.3％対11.1％），現象学的アプローチ（26.6％対11.1％），包括分析，客観的解釈学でも有意であった（平成15年度～17年度科学研究費補助金（基盤研究Ｂ，課題番号15390660）による）。